老後資金


実質賃金が下がり、年金も減額されるなか、テレビや週刊誌で、「老後破産」などとして老後の経済的不安が取り上げられている。少しでも資産を増やそうとする人の中には、投資によるもうけ話にだまされる人も出ている。老後資金対策はどうすればよいのだろうか。
◇投資にはリスク

 退職後の投資に関する知識の普及を図る「フィデリティ退職・投資教育研究所」(東京都港区)が2014年4月に勤労者約3万人にインターネット調査を行ったところ、「老後資金の準備がない」のは44.8%。このうち50代男性でも32.1%で、野尻哲史所長は「晩婚化により、定年、親の介護、子どもの進学が同時期に重なる人も増えている。生活が破綻する予備軍が多いことは問題だ」と話す。

 同研究所によると、定年後も家計の支出は、現役最後の年の68%かかる。年金だけではとても足りず、蓄えがなければ、働く期間を延長するか、節約するしかない。対策としては、まず老後の生活費にどの程度かかるのかを算出する。主な生活費の原資となる貯蓄などの資産は95歳でゼロになるように考えるのがポイントだという。

 老後資産づくりに投資を取り入れる場合は、可能ならば低コストで比較的リスクの低い手法とされる「国際分散投資」を選び、運用しながら一定の割合で引き出す方法を提唱している。

 ◇保険など見直し

 ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんは「年金が破綻すると誤解したり、『老後資金に○千万円が必要』という記事にあおられたりすると不安が増大する。まず正しい知識を持つことだ」と語る。

 男性には、家計を妻に任せきりで、毎月いくらかかっているか把握していない人も多いという。「家計の状況を確認して、老後の必要額を試算するとともに、不必要な保険に入っていないか、条件が有利な住宅ローンへの借り換えが可能かなど、大きな支出から無駄を見直す」ことを勧める。足りないようなら妻も働き、40~50代のうちに、老後資金をためるべきだという。

 また、「退職金が出た直後に、金融機関から勧められるままに投資を始めると損をしやすい」と深田さん。初心者向けの本を読み、現役時代から、お試しで少額投資をすることをアドバイスする。

 ◇周りに惑わされず

 経済評論家の山崎元さんは「老後やインフレの不安をあおるのは金融業界の商法。投資で手軽に解決できると思わないこと」と話す。高齢者には毎月分配金が支払われるタイプの投資信託が人気だが、「毎月分配型は収益がある場合は税金を毎月払う必要もあり、コストも高い。金融機関に任せる『ファンドラップ』も手数料が高く、何に投資しているか分かりにくい。投資は年齢に関係がなく、高齢者向けの投資はない」という。

 さらに山崎さんは、投資は自分が損してもいいという範囲にとどめることが大切だとする。自ら勉強し、金融機関や友人・知人が勧める商品でもむやみに信用しないようアドバイスする。山崎さんは「損して困る分は、より安全な変動金利10年の個人向け国債などで運用する」とし、「投資してもいい分は、特定の指数に連動する上場投資信託(ETF)で運用すればいい。例えば東証株価指数と先進国の株式指数(MSCIコクサイ)に連動するものをおおむね半々で持つことだ」と勧める。

 ◇破産、まれなケース

 定年後のサラリーマンを支援する企業「オフィス・リベルタス」(東京都中央区)の大江英樹社長は「老後破産まで至るのはまれなケース。しかし、ショッキングな話を聞くと、不安になるのだろう」と指摘する。

 老後資金は必要だが、1950年代から現在までの銀行金利で、インフレに対応できなかったのはオイルショックなど短期間にとどまる。「インフレを恐れて無理に投資をする必要はなく、あせれば、損失を出したり、詐欺被害に遭ったりする危険もある」と語る。

 投資をする場合、現役時代ならサラリーマンは確定拠出年金、自営業は小規模企業共済など税制面でメリットがあるものを推奨する。詐欺被害に遭わないためには、「元本保証で年率○%」といったうまい話はないことを肝に銘ずるとともに、分からないものに手を出さないよう忠告している。

 大江さんは「老後に一番大事なものは、家族や友人との人間関係を良好にして、自分の居場所を作ること。これがなければ、お金があっても悲惨になる」と話している。【柴沼均】
参考文献 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150114-00000009-mai-soci

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